一度勝ち取った参加型を後退させることはできない(大東大におけるPBL授業の堅持)

 けさの朝日新聞に「小中高やディズニーはよくてなぜ大学はダメなのか」という至極もっともな学生たちの声が掲載されていた。実際、オンラインによる画一一斉授業の質の悪さを嘆く声は多い。

 わたしの大東文化大学での「NPONGO」という授業はもう10年にわたって学生が自ら動き他の学生たち働きかけるPBL(Problem based Learning)の形で行ってきている。ここにきてオンライン授業を強要しかねない「対面でやるなら理由を書いて提出せよ」

という指示が大学から来たので、参加型を堅持すべく以下の要望書を書いた。

 なぜ参加型でやるのかの意図を組み取っていただけたなら幸いである。

 

社会学部教務委員会御中

後期「NPONGO社会学」の対面実施のお願い

 20年8月5日 非常勤講師 森 良

 

  後期授業として予定されている「NPONGO社会学」の授業方法は、予定通り対面実施(ワークショップ方式)として行わせてくださいますようお願い申し上げます。

 理由は、以下の通りです。

 

 シラバスには次のように謳われています。

<授業の概要>いま、「新しい公共」が社会をつくる力として注目されている。NPOやNGOは、行政や企業ではできないサービスを提供することにより、「持続可能な社会」や「相互扶助的な市民社会」をつくっていく市民公益団体である。本講義では、まず、受講生にとって関心のある課題を解決するために模擬NPOを設立してもらう。そして、数ヶ月間実際に活動してその振り返りをすることによって、NGONPOについて理解を深めてもらい、それに関わる知識の習得を目指す。

<授業の到達目標>

NPO,NGOの役割、活動について説明できるようになる

②ワークショップ、セミナーを企画、運営できるようにする

③プレゼンテーションが的確にできるようになる

<授業の形態>講義をしつつ、各グループに分かれ、プレゼンテーションやワークショップを行う

 

 本授業を前任者から引き継いだ時に、次のように授業の在り方を検討しました。

「ボランティアやNPOの体験がない学生たちに、どうしたらNPOを自分事としてとらえてもらえるか?」→「学生にとって切実な課題を挙げてもらい、その課題解決に向けて他の学生たちに調査したり、ワークショップやセミナーを開いて働きかけをしてもらうなどの模擬NPO活動を体験してもらうことによって、意欲的に取り組むことができ、かつ他の学生たちの反応によって自己効力感をたかめ、調べたり人に働きかける実際的なスキルも身につけることができるのではないか」

 そのねらいは見事に的中し、学生たちは自主的にアンケート、ヒアリングなどの調査やワークショップなどを展開して、大変興味深いプレゼンをたくさんしてくれました。印象に残っているのは中国人学生を中心とした住民を巻きこんでの「餃子パーティ」や当事者である学生たちによる「ギャンブル依存」の実態調査、啓発ワークショップなどです。

 オンラインのみではグループも形成できず、NPOについての知識伝達で終わってしまい、上記のような学習効果を期待することはできません。

 下記のような留意事項を実行しますので、対面授業を認めていただきますようお願いします。

 

<実施にあたっての留意事項>

・オンライン参加の学生の受講も認める。ただしグループ形成後は、グループの討議に参加し、どう行動するかはグループの話し合いに任せる。

・グループ活動のプレゼンと各自のレポートによる単位採点についてはハンディを考慮して行う。